#63

本当にのんびりと英語の練習をしている.副反応やなんやらでぼちぼち進めていたゲーム『Night in the woods』 に結構,いや,熱狂的ではないほどにしても仲の良い友人には面白かったと話し,サントラを聴きまくっている程には......ここまで書いて,今までのハマりっぷりがまあまあ極端だったんだなと思い知らされるが.......そして,辞書引きながらでも良いので原文を読んでみたいと思うほどにはハマっている.で,先日リリースされたiOS (英語版) を購入した.非常に優れたローカライズ*1であるがゆえに,多言語データをいれる余地がなくSwitch だと日本語版しかプレイできないからである.あとロードの時間がSwitch より幾分マシになっていれば......と期待を込めて.体感,2年ほど前に購入したiPad pro にダウンロードしたiOS版 の方が早い,あと作中ミニゲームが操作しやすい.ラッキーである.

辞書がなくともゲームの進行に差し障りがない程には読めるのだが,いちいち音読,そして引っかかったフレーズは検索してメモしているので,まあ尋常じゃないくらい進まない.1シーンで10分くらい使っている.

主人公のMAE "メイ" は口が悪いので,良い歳した大人が使ってそのまま良いのかは謎だが,なんせ日常会話が多いし舞台上Depressed な人物も多く出てくるので,身の丈にあったフレーズが多くまあまあ勉強になる.例えば "Sorry to talk your ear off about it" (喋りすぎてゴメン)というセリフなんかは明日からでも使えそう.言ってる,めっちゃ日常で言ってるもん.

英語で言うとVOGUE のyoutube も大変お世話になっている.なんだかんだ土日朝起きて,VOGUE チャンネルの適当な動画を流しながらブツブツとシャドーイングしている.これもお決まりの英語やっててキモい病が出るのだろうか......

話が散逸しているが,『オッドタクシー』も先日全て見たので,動物の姿をした人間のシリアスなサスペンスと言う立て付けの物語ばっかり触れている気がする(どちらも猫の失踪事件が物語の中心になっている!).まあ好きだし面白いので良いんだけど,最近競馬も見るし,人間の姿がドラマをしているのを見るのが疲れているんだろうか...... その可能性はあるな,毎日がフィクションのようで,悪いニュースばかりで,ここ二・三年の見通しも立たないのだから.

で『Night in the woods』の話を少しすると,各所で推されている「リアルな人間模様」が突出して良いのだが,その他にも個人的に惹かれる点がいくつかあった.

  • 舞台背景:事前情報は「大学を中退した猫が実家に帰ってくる」というものだけだった.最初のシーンで,彼女の故郷 "Possum Springs" はペンシルヴァニア州に位置することと,鉱山事業によって栄えた街であることから,概ねRust Belt の物語だとわかる.中退して戻ってきた+Rust Belt の田舎町とくるとかなり暗い話だな......とのっけから思った.
  • 物語の時期:秋,それも収穫祭の直前.つまりこれから冬になっていく季節.衰退していく街・先行き不透明なメイの将来に,これから暗く寒くなる季節を当てているせいで二重三重に憂鬱な雰囲気が出ている.
  • BGM:めちゃくちゃ良い Real Estate やThe DrumsなどのUSインディーっぽさがありすごい好み.あとで調べたらDIIV に影響を受けているらしい*2 .USインディーっちゃインディーだけど.先述の通り,秋のオレンジっぽくなった街全体が浮かぶ.
  • 街と家:アメリカ中西部の小さな町にある某大学に一時滞在する予定があり,ストリートビューで街の様子を調べたり,Airbnb でなんともない一般的な一軒家に宿泊予約を入れたりした事があった.コロナで滞在が中止になったことで更に,私の中でイメージが加速しており,メイと一緒に行くはずだったあの街を探索している気分になった. 2D スクロールでデフォルメされていた分,更にイメージが加速しているので今夜あたり夢に出てくるかもしれない.

シナリオは賛否あるのではとHello! Indie world は書いている けれど,私は良かった.ホラー耐性......これは「怖いのが苦手」より「怪奇を怪奇として受け入れられるかどうか」という素養......があれば全然受け止められる結末だし,多少ズルイな〜とは思うけれど致命的ではなかった.最後は2~3時間くらいぶっ続けでのめり込んでしまったので,終わった後が非常に疲れた.映画一本観終わった後のような......って書いてるけど,それ以上に背中が重くなるようなゲームだった.

中高の時,身の回りは洋楽や洋画,洋ドラにハマってそれで英語を勉強した同級生が大勢いた.みな社会性があって,英語も出来るので成績が良くて賞も取っていたので......真似してみたけど,ハマりきれなかった.親も若い時は海外文学と音楽に貪欲なタイプだった.なので,大阪吉本の若手芸人とアニメと漫画,というドメスティックなカルチャーが好きな自分をなかなか肯定できずにいた.お笑いオタク仲間の先輩には海外のコメディに明るい人もいたけれど,私にはそこまでだった.なんで私だけダメなんだろう,みたいな.日本のお笑いなんて一番ドメスティックじゃないかと.

ここ最近はほぼ洋楽しか聞かない.寝際の習慣になってしまった動画コンテンツも海外で製作されたものばかりである.数年前はがっつりお笑い見てたので,時代か年齢がそうさせているのだと思うが,これは10年前の自分に対するセラピーなんじゃないか.私にとって,読みたい理解したいと思わせる海外の情報は論文とファッションとゲーム(特に物語性の高いADVゲーム)だったのだ.自分なりの入口が見つかって良かったね,と言ってあげたい.

またほぼ同時期に,最近の作り手の開示過多に辟易していた日本のお笑い文脈でありつつも(モラルや男女の描き方は90年代から止まってんなというところはあるが)刺激的な内容の『オッドタクシー』にも触れられたので,長年愛していたものも尊重されたような気がしている.

......書くに当たって調べてたら,NitW ゲームデザインを分析したピアレビューな論文が出てきた. Consalvo, Mia, and Andrew Phelps. "Getting through a Tough Day (Again): What Possum Springs Says about Mental Health and Social Class." American Journal of Play 12.3 (2020): 338-362.

あとオッドタクシーも英語字幕つくのであれば,Blu-ray Box 買おうかしら.あの独特の会話がどう訳されるのか(期待しても良いのならば)見てみたい. 私情としてはダイアンにはずーっと声の仕事(アニメかNHK教育深夜帯の番組のキャラクターのアフレコ)をやって欲しかったし,評判も良いみたいなので僥倖である.本当に声がいいんだよなダイアンは.よなよなが終わるのは本当に残念だが......

*1:『VA-11 HALL-A』『返校』『Replica』とPLAYISM には本当にお世話になっている

*2:nightinthewoods.fandom.com