#78

何かと盛り沢山な1ヶ月だったのでまとめ.U先生に「助教の9月は忙しいよ」と9月に入ってから言われた.もっと早く教えて欲しかった.

 

9/n

有志の研究会でやっている研究セミナーを初めて主催.香港とケンブリッジの研究者をweb上でお呼びした.有志の研究会なのでHPもなく,得体も知れない集団だっただろうにも関わらず快諾いただいた先生方には頭が上がらない.そもそもちゃんと来てもらえるのかという不安から始まり,何としてでも面白くしなければならないというプレッシャーがあったが,討議に入っていただいたO先生に大いに助けられ,研究会のメンバーに助けられ,会は終了した.

研究室には理論モデルを作ってトイモデルを動かして挙動を見たいという人と,モデルを作ってパラメータライズして現実を推論したいという人とがいると思う.私は圧倒的に後者の方なので,データの特異性とモデルの特異性がある研究をされている方,というめちゃくちゃ大雑把な括りで声をかけた(単に私が話を聞いてみたい研究者だったのだ).思いもよらなかったデータを使って機械学習で解くのだが,機械学習を使うことに妥当性もあり,やっぱりトップの人は色々解けているのだな……と感じた.自分で能動的に選んだこともあって,精神衛生も非常に良かった.これを機にコネクションが出来ればとも思っている(HPも早々に作りたい).ケンブリッジも香港も行きたいですね.

 

9/n

学科の必修授業=合宿の引率.久々の合宿形式だったこともあり感染症対策など多方面に気を遣う必要があったので来年は無くなっていることを祈る.

私個人として「あなたの思う"京都"をスケッチしてきてください」と言われた時,有名な寺社仏閣とか祇園の街並みとか着物を着て街を歩く人を描いているようでは全然ダメで,バスに並ぶ長蛇の列とか地蔵盆の痕跡とかを切り取らなければいけない.1%くらいの人しか気づいていないであろう観点を探し,考え,提示しようという姿勢が,研究も含め何か作るにおいては重要だと思う.教員になった当初は,エスキスする学生全員にそうした姿勢を求めており,まあ,あけすけに言ってしまうとみな工夫がなくてどうしたものかと思っていた.しかしながら最近は,平々凡々な人の真面目な営みによって日々の生活は回っているということに気づき,平凡だが真面目で几帳面である(個人的には工学はある種の几帳面さが求められていると思う)だけで十分評価に値するのであり,こちらをアッと驚かせるような提案をする学生は50人いて1人か2人いれば万々歳なのではないかと思うようになった.

実際のところは,いくら全く想像だにしなかった切り口を提示しても,複数の課題を解けていないと見向きもされないのが難しいところだと思う.一方,難しいからといって学生に求めないのは教員の怠慢だと思うので,そうしたattitudeは提示し続けたい.ただ,私がそれを本気で言ってて実践しているのか学生から常に厳しくチェックされている(特に弊学の学生は厳しい)ので,言行一致,虚栄も何もない生き方が結局ベストなのだと思い知らされる.

 

9/n

学会の全国大会で京都に.当日明朝,耳の激痛で目が覚めたため,発表はなんとかこなしたものの聴講や交流の余裕もなく東京に即帰宅.帰る前にちゃっかり伊勢丹でランチしたのだが,美味しかったのに全然集中できなくて悲しい.

東京帰還後,即耳鼻科にかかったところ38℃の発熱が判明.抗原検査は陰性だったものの外耳炎の診断を受ける.抗生物質ロキソニン,点耳薬を受け取り大人しく休むものの全く回復せず,数日後セカンドオピニオンで別の病院にかかったところ中耳炎も併発していた.体力の衰えを感じるとともに,耳は大事にしようと誓い,骨伝導イヤホンを購入した.

 

9/n

ACT-Xの2022年度採択者がリリースされ,無事に採択されていた.通って一安心.これでまだ研究が続けられるぞ!

 

9/n

行動モデル夏の学校2022でレクチャーと研究発表,エスキスをした.学生の時からも含めると6回目の参加になるが,初めてのエスキス側の参加だった.それなりに見ているのでわかるのだが,皆意欲的で,スライドの完成度も高く本当にすごいと思う.自分がエスキスした班は一歩及ばずなところがあったが,最終発表で努力の痕跡が見えたのが印象に残っている.機械学習と行動モデルの融合は,Eric Pas Prizeを見てもトレンド(?)なようなので,アーリーアダプターでない以上今から参入するのは気が乗らないが,しっかりと論文を読んで距離感を測るべきだと感じた.

研究発表については初出しでまだ論文化もしていない内容だったので,この段階で良いコメントをもらえてよかった.毎回思うが師匠でもなんでもない若手なので新ネタをおろす気概が大事.

運営の面では,託児所も導入したり,動画による提出を要件としたりチャレンジが色々あり新しく導入した試みは概ね成功だったように思う(学生のオペレーション能力がマジで高い,凄い).一方で,開催日程は平日の方が先生方の負担も少なく,海外の招待講演もオファーしやすいはず.また,基調講演が白人男性あるいは日本人男性ばかりなのも問題なので,来年は女性研究者あるいは非白人研究者に声をかけるべきだろう.

個人的な話にはなるが,高名な先生方が基調講演で昔話をする際に男性だけで集まって飲みに行った時の写真を大抵スライドに掲載するのだが,その度に疎外感を感じて辛いものがある(私は女性だしお酒も全く飲めないので).ホモソーシャルなノリと会話がそこでなされていたのかは写真から推論できないので断定はできないが,前時代的な光景には間違いない.自分の世代はそうでないコミュニティを作れたらと思う.

 

9/n

某学会の予稿を投稿.他大学に比べて少ない方ではあるものの教育とか学務とかに時間が取られる中で,如何に研究を進め論文を書くのか?という大学の若手研究者のほとんどが抱えるであろう問題がこれか...... といった感触で,いい練習になった.

 

あわあわしているうちに涼しくて過ごしやすい気候になっており,冬学期の予定をまとめているうちに,これから来る季節が楽しみになっている.いい9月でした.